染色体疾患とは
染色体疾患とは
赤ちゃんの3~5%は、先天性疾患をもって生まれてきます。
先天性疾患といっても、そのすべてが命に関わるものではありません。
先天性疾患には、妊娠中にわかるもの・わからないもの、原因が特定できるもの・できないもの、生命に関わるもの・関わらないもの、治療できるもの・できないものがあります。
原因は様々ですが、先天性疾患のうちおよそ1/4が染色体の変化が原因といわれています。
染色体の変化は一般的には染色体疾患と呼ばれます。染色体疾患のうち、最も多いものがダウン症候群(21トリソミー)で約半数(53%)、18トリソミーが13%、13トリソミーが5%と続き、3つのトリソミーで染色体疾患の約70%を占めています【図1】。
通常、ヒトの細胞には46本の染色体があり、それぞれが2本1組の対を成しています【図2】。このうち22対(44本)は常染色体と呼ばれ男女に共通しますが、残りの1対は性染色体といい、男性はXY、女性ではXXをもちます。22対の常染色体は、大きい方から1~22 番と番号が振り分けられています(21番と22番のみ例外で、実際は21番染色体が最も小さいです)。
染色体疾患の原因は、染色体の数の変化(数的変化)や形の変化(構造変化)によるものがあり、もっとも頻度の高い変化は数的変化のトリソミー(通常2本の染色体が3本存在すること)です。出生前検査で対象となる疾患は、21番染色体が3本になるダウン症候群(21トリソミー)、18番染色体が3本になる18トリソミー、13番染色体が3本になる13トリソミーです。このように、染色体の数が増えると赤ちゃんに様々な症状が現れます【図3】。
3つのトリソミー
ここからは、NIPTで調べることができる3つのトリソミー(ダウン症候群:21トリソミー、18トリソミー、13トリソミー)について説明します。
ダウン症候群(21トリソミー)
21番染色体が1本多く、3本になることが原因の染色体疾患です。出生率は、妊婦さんの年齢とともに上がります【図4】。
ダウン症候群(21トリソミー)は、先天性の心臓の疾患(約50%)や消化管の疾患(約10%)などを有することがあります。しかし、事前に検査で調べることにより、産婦人科と新生児科の連携を通して、より整った体制での臨床管理、早期治療への介入と、経過観察が可能です。
出生後は小柄ですが、少しずつ成長していきます。筋肉の緊張が低下しているため、運動の発達は時間がかかります。また、知的発達は個人差があり、言葉の発達はゆっくりです。子育ての際に、より手をかけてあげることが必要なことがありますが、その子にあった赤ちゃん体操やリハビリテーション、療育により、最大限の発達を引き出すことが可能です。
また、厚生労働省の研究班のアンケート結果によると、ダウン症のある方の約9割が「幸せを感じる」という結果がでています(n=841名)。
その他の就学・就労状況のアンケート結果は【図5】に示しますが、多くのダウン症候群(21トリソミー)があるお子さんは、支援クラスを利用しながら地元の学校、あるいは特別支援学校に通っています。就業する方も多く、スポーツ・芸術などさまざまな分野で活躍している方もおり、社会性が保たれていることが多いです。現在の平均的な寿命は、60歳前後です。
18トリソミー
18番染色体が1本多く、3本になることが原因の染色体疾患です。出生率は、妊婦さんの年齢とともに上がります【図4】。男女比は1:3で、女児に多く認められます。
多くの場合、先天性の心臓の疾患(95%)、消化管の疾患、口唇口蓋裂など、複数の治療が必要な合併症を有します。
赤ちゃんのときから成長障がいがありますが、少しずつ成長していきます。多くの場合、自力での歩行や言葉の使用が難しいことが多いですが、周囲のことは理解して笑顔や声で応えることが可能になります。 心臓に関連した合併症が原因で、寿命(生命予後)が短いケースが多い(1か月生きることができる赤ちゃんは50%、1年生きることができる子どもは10%)といわれますが、20歳を超えて元気な方もいます。
13トリソミー
13番染色体が1本多く、3本になることが原因の染色体疾患です。出生率は、妊婦さんの年齢とともに上がります【図4】。
先天性の心臓の疾患(80%)や全前脳胞症という脳の構造異常など、複数の合併症を有することがあります。
発育・発達についてはとてもゆっくりで、言葉の使用は難しいことが多いです。しかし、周囲のことは理解してサインを使ったり、笑顔や声で応えることが可能なこともあります。
13トリソミーの赤ちゃんの80%は生後1か月を迎える前に亡くなり、寿命(生命予後)は、1年生きることができる子どもは10%といわれます。
さらに詳しい情報は、臨床遺伝専門医や染色体疾患の子どもの診察経験がある小児科医、
認定遺伝カウンセラーへお問い合わせください。